『自殺サークル』(漫画)レビュー
☆☆☆☆☆☆☆★★★
星7/10
[全1巻]
『帝一の國』や『女子高生に殺されたい』で有名な古屋兎丸さんの初期のほうの作品だ。
映画の『自殺サークル』を漫画化してほしいと映画の監督にお願いされて書いた作品だ。
映画の漫画化といっても、映画のまんまではなく、作品のタイトルから考えを膨らませてオリジナルの漫画に仕上がっているらしい。(漫画のあとがきに書いてあった。)だから映画のネタバレはない、でも随所に共通点は散らばっているらしく映画を見ても両方楽しめる作品なのではないだろうか。(私はまだ映画の方を見ていないので断言できないが...機会があればぜひ映画のほうも見てみたい。)
あらすじ
駅のホームで数十人の制服を着た女子が横一列に並び、手をつなぐ。電車が「ゴーッ」という音とともに駅に入ってきた。少女たちが「いっせーのせっ」の掛け声とともに線路に飛び込んだ。積み上がった肉塊、飛び散る肉片、そんな中奇跡的に一人だけ助かった女子がいた。その少女の名は小夜といった。
死ななかった彼女は奇跡の人とされ、「彼女と会って心が軽くなった」などの噂が流れ、いつしか彼女の周りには傷ついた少女が集まり始め、サークル活動が始まる...
ポイント
私が最初にこの作品を読んだのは中学生時代だった気がする。別にメンヘラだったわけじゃないが、中学生の精神はなかなか繊細なもので、この漫画を読んでて、なんとなく自傷行為を繰り返し、傷の舐め合いをするために集まる少女たちに共感を覚えた。
お揃いの物を買って「ずっ友!」なんていう友達はいなかったが、個人的にはそれにちょっと憧れを抱いていた。その「お揃い」のエスカレート版がこのサークルで行われている。
少女同士で自分の心を吐露しあい、一緒にリストカットをして心を軽くし、お揃いのタトゥーを耳に彫り合う。
「お揃い」であることは少女にとっては魔法のようなものだと思う。みんな、自分のそれぞれの個性を探すけど、それでもやっぱり集団に属するということは、自分を認めてもらえていることであるし、自分の居場所がそこにある、ということでもある。
自分の居場所を見つけられなかった女子が集う場所、それがこの自殺サークルなのだと思う。
集団自殺して、生き残った人がまたあらたなサークルを作る、その繰り返しが物語では起こっていた。
このサークルがどこかにあるかもしれない、と思わせるリアルさと、古屋さんっぽい独特で奇妙な空気感、そのバランスが結構好きな作品だった。
少女の虚しさ、足掻き、焦燥、空っぽさ、嘘っぽさ、寂しさ、強欲さ、みたいな物をよく描けていた作品だと思う。