『黄昏流星群』レビュー
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★
星9/10
[1~56巻(2018/3/10時点で)]
基本完結しているものをレビューしていこうと思っていたのだが、短編集だからいいかな?と自分に甘々な判断を下したので、レビューを書いていこうと思う。
『黄昏流星群』を知っている人は少ないかもしれないが、『島耕作シリーズ』を聞いたことのある人なら多いのではないだろうか?
島耕作を作った作者、弘兼憲史が描いた中高年の恋愛漫画がこの『黄昏流星群』だ。
あらすじ
同作品は主役を40代以降の中年・熟年・老年とし、恋愛を主軸に人生観などを描いた短編漫画集である。タイトルは、老いゆく過程で光り輝くという意味から。英題は『Like Shooting Stars in the Twilight』。従来、漫画は子供向けの物とされていたが、時代を経て、かつての子供も中年や熟年になり読者の一部を占めるまでになったものの、その読者層を主役をした作品が少ないとの考えから制作された。青年はもとより同世代の中高年にも広く愛読されている社会派漫画として知られている。ストーリーの話数は最大10話前後、最小2話の構成となっており、話数の関係で単行本に収録される話は(1集につき9話収録なので)雑誌掲載順とは異なっている。なお、サブタイトルには「星」や星に関する言葉を入れている。
ポイント
恋愛漫画と聞いてなにを思い浮かべるだろうか?
たぶん、私なら最初に『君に届け』的な少女漫画や、『らんま1/2』的なラブコメを思い浮かべると思う。
恋愛漫画は基本、青春真っ只中の人たちが主人公の漫画か、ちょっと年が行っても、結婚前の盛り上がりを描く漫画が多いと思う。
でも、私たちの人生は長いわけだし、ましてや高齢化社会の現代では結婚した後の年月が長かったりするわけだ。
長い結婚生活の間、旦那がいても新しい素敵な人に恋に落ちてしまう可能性は否定できないし。刑務所生活が長かった中年男性が、出所後燃えるようなロマンスを繰り広げるかもしれない。
そんな、あまり注目しない中年の恋愛、そして中年のセックスについて、スポットライトをあてたのがこの『黄昏流星群』だ。
こういう会話を実際にカフェで聞いたことがあるような気がする〜〜というリアルさ。
すごい人生を歩んできたわけではないが、きちんと数十年の人生を歩んできた人たちの人としての厚みを感じられる描写が多い。
そんな、何処にでもいそうな、でも何処にでもいるわけではない、おじさんおばさん達がこの漫画の主人公なのだ。
昔、少女漫画で恋愛概念を構成していた私の脳は、不倫や浮気は完全悪だと思っていたが、この漫画を読んで考えが変わった。
中年でも恋はするし、刺激を求めるし、肉欲はあるし、純粋に愛するし。年を取っても人は人だということを丁寧に描いている作品だ。
フィクションなので、ちょっとぶっ飛んだ設定が入ってくることもある。
タイムスリップしたり、死神が現れたり。
でも、自分に都合の良すぎる、理想型すぎる物語ではない。
「等身大の理想」、ほどよい妄想とでも言えばいいのだろうか。
あくまで、背景設定がちょっと非日常なだけで、登場する主人公は誰も特別すぎることはなく、人間としてできる範囲のことを頑張るから、見ていて心地のいいフィクションだ。
小説なら中年同士の恋愛を描いた作品も多いが、漫画でこういうテーマを扱った作品はとても少ないと思う。
漫画のタッチも重苦しくなく、しっかりと実態を掴みながら軽やかに描き出している、文学的な作品だと思う。
『黄昏流星群』というネーミングが本当にぴったりで、どこか寂しくって、でも希望に満ちている作品だ。ネーミングが素敵だなって思ったらぜひ読んでみてほしい。名は体を表すというが、本当に作品タイトル通りの漫画なのだ。
私自身がまだまだ未熟なので、この作品の良さを完全に理解しているとは言い難いし、まだまだ私が語るには早い作品のような気もする。
しかし、それでもこの作品を読んで「面白い」と感じるから、良い作品なのだと思う。
短編集なので、どこかの居酒屋に入った時、漫画が置いてあったらぜひ一度読んでみてほしい。
一話目の試し読みがあるので、ぜひぜひどうぞ。
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個人的には29巻の二つ目のタクシードライバーのお話が可愛くって好き。